食品分析は妥当性評価が行われた物でないと意味がない

食品1

私たちが普段食べているさまざまな食品は、食品分析が行われてから店頭に並んでいる物が少なくありません。食品分析には大まかに分けてふたつの方向性があります。ひとつは食品に好ましくない物が混入していないかと言う分析です。

そしてもうひとつは栄養成分分析です。これらは正しく分析されていないと意味がありません。正しい分析かどうかはどのように評価されているのかを見てみましょう。

関連記事:栄養士の資格があるといい!?食品分析について理解しよう!

好ましくない物の残留がないかどうかをチェック

食品分析と言えば、食べては危険な物が混じっていないかどうかのチェックがとても重要になります。私たちにとって身近な物としては残留農薬の検査が挙げられるでしょう。21世紀に入ってからは国産の野菜などで残留農薬が問題になることは少なくなりましたが、輸入品についてはまだまだ大切な分析です。

特に輸入野菜や穀類についてはポストハーべストによる残留農薬が問題になりやすいため、しっかり分析が行われないといけません。一方、その食品分析において基準値を超えるポストハーベスト農薬が検出されることはほとんどなくなっています。

これは日本の検査所においての食品分析が徹底しているから、輸出側が慎重になっているからとも言えるのです。

また、その分析の信頼性が高い、つまり正しく妥当性が評価されているからこそ「その分析が間違っているのだ」と言う反論を受けないとも言えます。例えばポストハーベスト農薬でよく話題になる防黴剤のオルトフェニルフェノール(OPP)やチアベンダゾール(TBZ)は、毒性があるため基準量を越えての残留は認められていません。

一方で、自然毒の中で最も強力な発がん性物質であるアフラトキシンを作り出すカビなどを抑えることで、健康被害から消費者を守っている側面もあります。正しく使われていれば健康被害を出さないために役立つ物が、本当に正しく使われているかをチェックするのが食品分析の大きな役割のひとつなのです。

残留農薬などの分析法の妥当性評価

食品分析を行う際に、その方法が妥当であるかどうかの評価はとても重要です。分析法が妥当でなければ、出てきた結果もまた信頼できない物となってしまいます。そこでさまざまな評価が行われているのです。まず標準物質に対する分析を行ってみて、そこで出てくる結果が標準物質の持っているデータに対して、どれだけ偏るかをチェックする「真度」の評価を行います。

さらに同じ試料に対して同じ分析室で同じオペレーターが何度も分析を行って、その結果がどれだけばらつくかを見る「繰り返し精度」も評価します。さらには同じ試料に対して別の分析室で別のオペレーターが分析を行ってばらつきを見る「室間再現精度」も評価するのです。

これらの真度と精度を合わせて「精確さ」と呼び、妥当性を評価する重要なファクターとされています。こうした分析を行う際に重要なのは「ゼロ」という物はあり得ないという考え方です。すべての物にはすべての要素が含まれていると考え、測定結果がゼロになった場合は「検出限界以下」であったと考えます。

あるいは含まれていることは分かったのだけれど、その量を特定するには少なすぎたという場合「定量限界以下」あるいは「痕跡」と言う表現が用いられることもあります。いずれもゼロではないのですが、きわめてゼロに近いと考えることのできる数値です。

これらも妥当性評価には大変重要な要素なのです。そうした上で、分析法の妥当性を評価する前に決めておいた「妥当であると判断する基準値」を満足するかどうかで、その分析法が採用されるかどうかが決まるのです。

栄養成分分析の方法と目的

食べ物を買う時に、栄養成分表を見てから買う人も多いでしょう。特にカロリーウォッチャーの人なら、熱量だけでも必ずチェックしているのではないでしょうか。この栄養成分表示ですが、2015年4月に施行された食品表示基準によって、あらかじめ包装された加工食品などにすべて表示されています。

完全に表示が義務化されているのはカロリーと三大栄養素、食塩相当量です。

任意表示には推奨される物として食物繊維と飽和脂肪酸の量、その他の表示には必須脂肪酸・ビタミン・ミネラル・コレステロール・糖質・糖類があります。ビタミンやミネラル、必須脂肪酸はその中で細かく分類されています。

これらの数値の精度はかなりあいまいです。もっとも緩い方法だと類似食品からの推計値を表示しても良いことになっています。次に緩いのは原材料の分析値からの計算で推計した物です。しかし、これではあまりに誤差の幅が広すぎる数値ですから、専門機関による試料の分析が推奨されています。

専門機関では依頼に応じて分析を行いその成績表を出してくれますが、精度の高い分析になればそれだけ料金も高くなります。そのため、精度についてもリクエストに応じられるようになっているのです。例えばタンパク質の定量を行う場合、試料を燃やす燃焼法と硫酸や水酸化ナトリウムを使うケルダール法があり、試料の性質などに応じて使い分けられています。

燃焼法は世界的にもよく使われていますし、日本でも醤油の分析の公定分析法になっています。一方で酸素を十分に供給して試料を完全燃焼させないと正しいデータが取れません。ですので、妥当性と言う意味では完全燃焼させるのが難しい試料ではケルダール法のほうが適している可能性があります。

栄養成分分析の妥当性評価

栄養成分分析については、得られたデータの用途によって妥当性評価に求められる物が変わります。一般の食品表示であればそれほど高い精度は求められないでしょう。それに対して治療食や栄養補助食と言った目的の食品であれば、一般食品より精度の高さが求められます。

さらにその数値が、その食材を使った加工食品の栄養表示の推計値に用いられるレベルであれば、かなり高い精度の分析が必要になるでしょう。妥当性評価の方法は残留農薬などの分析を行う場合と同じで真度と精度で評価しますが、得られた数値の確からしさをどこまで求めるのかは、分析データの用途によって大きく変わることになります。

妥当性の評価が食品分析の信頼性を高める

分析数値と言うのは往々にして一般の人々に信頼されないことがあります。特に分析数値の発表に政治的な要素が絡むと疑心暗鬼になるのが人情という物です。しかし、分析の現場にいる人たちは常に妥当性を追求しています。

分析自体が正しい方法で行われていなければ、どんな分析データも信頼されません。ですから、求める正確さに対して必要な妥当性の目標値を決め、その妥当性がクリアできなければその分析は採用されないか、採用されたとしてもより精度の低い物であることが明記されます。

一方、精度が低くても良いから目安の数値が欲しいという場合には、大急ぎで分析を行うこともあるのです。つまり、分析データをどう読み取るのかは、それを見た人にゆだねられているとも言えるのです。